【漢方でみる突発性前庭疾患】
特発性前庭疾患とは、平衡感覚を司る前庭神経に異常が発生し、斜頸や眼振など前庭神経障害の症状が起こる病気の中で、原因が特定できないものを言います。 高齢になった犬で、急に頭が傾き(斜頸)、黒目が横に流れたり(水平眼振)、回転したり(回転性眼振)します。同じ方向にグルグルと歩き回ったり(旋回運動)、 立ち上がれず横になって転んだまま一方向に回転したりします。
漢方学的には、脾気虚になると、痰が生じる一方で、飲食物から人体に必要な栄養(陰血)を十分産生できなくなり、五臓の肝(かん)に必要な陰血も不足する。その結果、それまで均衡を保っていた肝陽の勢いが盛んになり、体内を上昇し、肝風(かんぷう)となって揺れ動く(肝風内動)。
痰と肝風が合わさると、風痰の邪となり、頭部(清空)に上昇して乱れ騒ぎ(擾乱[じょうらん])、内耳や眼球、脳に入り、それらの機能を乱す。この状態を「風痰上擾清空」という。さらに痰は人体に必要な栄養物質(清陽)が頭部に至るのを阻害する(痰阻清陽)。
風痰が上昇して頭部に至り、内耳、眼球、脳に入ることにより、めまい、ふらつき、頭が重い、張るような頭痛、目のくらみ、回転性のめまい、悪心、嘔吐、耳鳴りなどの状態が生じる。
|